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シニアには「寿命」がたくさんある|平均寿命・健康寿命・貢献寿命で考える豊かな人生設計

世界有数の長寿国・日本の現状

日本は世界でも有数の長寿国として知られており、平均寿命は年々伸び続けています。医療技術の進歩、栄養状態の改善、衛生環境の向上などにより、多くの日本人が長い人生を享受できる時代となりました。

厚生労働省が発表した「簡易生命表(令和6年)」によると、2024年の日本人の平均寿命は男性が81.09歳、女性が87.13歳となっています。これは半世紀前と比較すると、実に15年以上も平均寿命が延びているという驚くべき数値です。

しかし、長生きすることと、充実した人生を送ることは必ずしもイコールではありません。大切なのは「どれだけ長く生きるか」だけでなく、「どのように生きるか」という質の部分です。そこで注目されているのが、複数の「寿命」という概念です。

3つの寿命を理解する

現代の高齢社会を考える上で、以下の3つの寿命の概念を理解することが重要です。

1. 平均寿命:生物学的な生存期間

平均寿命とは、0歳時点での平均余命のことを指し、その年に生まれた人が平均して何歳まで生きるかを統計的に示したものです。

2024年のデータ

  • 男性:81.09歳
  • 女性:87.13歳

この数値は、日本が世界トップクラスの長寿国であることを示していますが、これはあくまでも「生物学的に生きている期間」を表すものです。

2. 健康寿命:自立して生活できる期間

健康寿命とは、健康上の問題がなく、日常生活を制限されることなく自立して生活できる期間を指します。これは近年、平均寿命と並んで重要視されている指標です。

2022年(令和4年)のデータ

  • 男性:72.57歳
  • 女性:75.45歳

健康寿命は、単に「生きている」のではなく、「元気に自分のことができる」期間を意味します。買い物に行ける、趣味を楽しめる、友人と会える、旅行に行けるなど、自由な活動ができる大切な時間です。

3. 不健康な期間:平均寿命と健康寿命の差

平均寿命と健康寿命の間には差があり、この差は「不健康な期間」、つまり介護や医療的ケアが必要な期間を意味します。

不健康な期間の長さ

  • 男性:約8.5年(81.05歳 – 72.57歳)
  • 女性:約11.6年(87.09歳 – 75.45歳)

女性の方が不健康な期間が長い理由は、平均寿命が長いことに加え、骨粗鬆症や認知症などの慢性疾患の罹患率が高いことが影響しています。

この約9〜12年という期間は、多くの人にとって誰かのサポートを必要とする時期となります。だからこそ、健康寿命を延ばし、この「不健康な期間」をできるだけ短くすることが、高齢社会における重要な課題となっているのです。

新しい概念:貢献寿命とは

平均寿命、健康寿命に続き、近年注目されているのが「貢献寿命」という概念です。これは、単なる身体的・医学的な指標ではなく、精神的・社会的な側面から人生の質を測る新しい視点です。

貢献寿命の定義

貢献寿命とは、社会とのつながりを持ち、役割を担い、誰かの役に立ち感謝されるといった関わりを継続できる人生期間を指します。

これは、単に長生きするだけでなく、精神的な満足感や充足感を高め、より良い人生を送るための新たな長寿の価値として提唱されています。平均寿命や健康寿命の延伸に続く、高齢社会における新たな目標として注目を集めています。

なぜ貢献寿命が重要なのか

医学的・心理学的な研究から、以下のことが明らかになっています。

心理的効果

  • 「誰かの役に立っている」という実感が自己肯定感を高める
  • 社会とのつながりが孤独感を軽減し、精神的健康を保つ
  • 感謝されることで幸福感や生きがいを感じられる

身体的効果

  • 社会参加が認知機能の低下を予防する
  • 人と関わることで身体活動量が増え、健康維持につながる
  • 生きがいを持つことでストレスが軽減され、免疫力が向上する

社会的効果

  • シニアの知識や経験が次世代に継承される
  • 地域コミュニティの活性化につながる
  • 世代間交流が社会全体の豊かさを生む

つまり、貢献寿命を延ばすことは、個人の幸福度を高めるだけでなく、社会全体にとっても大きなメリットがあるのです。

人に貢献する気持ちこそが生きがいをつくる

人間は社会的な生き物です。誰かとつながり、役に立ち、必要とされることで、深い充足感を得られる存在です。これは年齢に関係なく、むしろシニア世代にとってこそ重要な要素となります。

仕事を通じた貢献からの移行期

50代の方々の多くは、まだ現役で働いており、仕事を通じて社会に貢献しています。しかし、60代になると定年退職を迎える方が増え、それまで当たり前だった「仕事というコミュニティ」「職場での役割」「社会への貢献実感」が一気に失われることになります。

長年勤めた会社を離れると、以下のような喪失感を感じる方が多いのです。

  • アイデンティティの喪失:「○○会社の部長」という肩書きがなくなる
  • 日々のリズムの消失:毎日出勤していた生活パターンが崩れる
  • 社会的つながりの減少:同僚や取引先との関係が希薄になる
  • 貢献実感の低下:「社会の役に立っている」という実感が得にくくなる
  • 居場所の不明確化:「自分の居場所」がわからなくなる

これらの喪失感は、時に深刻な心理的ダメージとなり、「退職うつ」や「燃え尽き症候群」につながることもあります。

新たな貢献の場を見つける重要性

だからこそ、退職後も「貢献できる場所」を見つけることが、心身の健康維持にとって極めて重要なのです。貢献の形は人それぞれです。大きなことである必要はありません。

地域での貢献

  • 自治会やマンション管理組合での活動
  • 地域の清掃活動や防犯パトロール
  • 子どもの見守り活動や交通安全指導

知識や経験の継承

  • 専門知識を活かしたセミナー講師
  • 趣味の技術を教える教室の開催
  • 若い世代へのメンタリングやアドバイス

ボランティア活動

  • 福祉施設での活動
  • 図書館や博物館でのガイド
  • 環境保護活動や動物保護活動

趣味を通じた貢献

  • 写真や絵画の展示で人々に感動を与える
  • 音楽演奏で地域イベントを盛り上げる
  • 手芸作品をチャリティバザーに出品

これらの活動を通じて、「ありがとう」と言われる経験を積み重ねることで、生きがいと充実感が生まれます。

退職後の生きがいづくりのステップ

ステップ1:自分の「好き」と「得意」を棚卸しする

まずは、自分が何を好きで、何が得意なのかを整理してみましょう。

  • 長年の仕事で培った専門知識やスキル
  • 学生時代から続けている趣味
  • 以前やりたかったけれど時間がなくてできなかったこと
  • 人から「上手だね」と言われたこと

これらをリストアップすることで、自分の「強み」が見えてきます。

ステップ2:興味のあるコミュニティを探す

現代では、シニア向けのコミュニティサービスが充実しています。オンライン、オフライン問わず、様々な選択肢があります。

趣味のコミュニティ

  • 登山、ウォーキング、ゴルフなどのスポーツ系
  • 写真、絵画、陶芸などの芸術系
  • 読書会、歴史研究会などの文化系
  • 料理、園芸などの実用系

学びのコミュニティ

  • カルチャーセンターの講座
  • 大学の公開講座やシニア大学
  • オンライン学習プラットフォーム
  • 語学教室やパソコン教室

社会貢献型コミュニティ

  • NPO・NGO団体での活動
  • 地域のボランティア団体
  • 子育て支援、高齢者支援などの活動

ステップ3:まずは参加してみる

「自分に合うかわからない」と躊躇する方も多いですが、まずは一歩踏み出してみることが大切です。合わなければ他を探せばいいのです。いくつか試してみることで、自分に合った居場所が必ず見つかります。

ステップ4:継続的な関わりを持つ

単発の参加ではなく、継続的に関わることで、深いつながりや信頼関係が生まれます。そして「この人がいないと困る」と思われる存在になることが、最高の生きがいにつながります。

おすすめのシニアコミュニティ

退職後の生きがいづくりに悩んでいる方には、以下のようなコミュニティサービスの活用をおすすめします。

趣味人クラブ(しゅみーとくらぶ)

URL: https://smcb.jp/communities

趣味人クラブは、大人世代・シニア世代の趣味や仲間づくりを応援するコミュニティサービスです。

特徴

  • 同世代の仲間と出会える安心感
  • 全国各地のオフ会やイベントが豊富
  • 様々な趣味のコミュニティが存在
  • オンライン・オフライン両方で交流可能

活動例

  • 写真撮影会や登山イベント
  • 美術館・博物館めぐり
  • 食事会やカフェ巡り
  • 旅行やドライブ
  • スポーツ観戦

このようなプラットフォームを活用することで、共通の趣味を持つ仲間と出会い、新たなコミュニティを築くことができます。

その他のおすすめコミュニティ

オンラインサロン

  • 著名人が主催する学びのコミュニティ
  • 特定分野の専門家が集まるグループ

地域のシニアクラブ

  • 市区町村が運営する老人クラブ
  • 公民館活動やサークル

学習コミュニティ

  • 放送大学や通信教育
  • オンライン学習サービス(Udemy、Schooなど)

シニア世代が生き生きと輝くために

「もう年だから」という思い込みを捨てる

「もう60歳だから新しいことは始められない」「今さら仲間づくりなんて」という思い込みは、自分の可能性を狭めてしまいます。

実際には、60代、70代から新しい趣味を始めて人生が輝いたという方は数え切れないほどいます。年齢は単なる数字であり、何かを始めるのに遅すぎるということはありません。

完璧を求めず、楽しむことを優先する

新しいことを始める際、「上手にできるか不安」と感じる方もいるでしょう。しかし、趣味やコミュニティ活動において、完璧である必要はありません。

大切なのは、「楽しい」「充実している」と感じられることです。下手でも、遅くても、自分なりに楽しむことが何より重要なのです。

小さな一歩から始める

いきなり大きなことを始める必要はありません。近所の散歩グループに参加する、公民館の講座に申し込む、オンラインコミュニティに登録してみるなど、小さな一歩から始めましょう。

その小さな一歩が、やがて大きな充実感と生きがいにつながっていきます。

まとめ:寿命の「質」を高めて豊かな人生後半を

日本人の平均寿命は男性81歳、女性87歳。健康寿命は男性73歳、女性75歳。そして、これからの時代に重要なのが「貢献寿命」という概念です。

長く生きることができる時代だからこそ、その人生の質を高めることが重要です。社会とのつながりを持ち、誰かの役に立ち、感謝される経験を積み重ねることで、人生後半を生き生きと豊かに過ごすことができます。

仕事を退職しても、人生は続きます。むしろ、時間的自由が増えた分、やりたいことに挑戦できるチャンスが広がります。新たなコミュニティを見つけ、仲間をつくり、生きがいを感じながら、充実した人生後半を送っていただきたいと思います。

興味のあるコミュニティを見つけたら、まずは一歩踏み出してみてください。その一歩が、あなたの人生を大きく変えるきっかけになるかもしれません。シニアには、まだまだたくさんの時間と可能性があるのですから。